Recipro engine
                                           



発動機(Hit and Miss Engine)完成


ペ−ジの末にエンジン運転中の動画案内が有ります 

1、製作の動機と特徴

数年前に海外のホ−ムペ−ジを閲覧していたところ多数の模型エンジンビルダ−が古典的発動機の模型を制作している事を知りその時に忘れていた子供の頃の思いがよみがえり、当時自分の家は農家で農作業に発動機を使っており低速回転型のエンジン音、湯煙が思い出されてきました。
国内の発動機について調べたところ発動機愛好家の団体が有り運転会を時々開催されている事を知りましたが
模型発動機についての情報は探し出せませんでした。
国内に模型発動機(実動するエンジン)がないならば自分で作って
みようと思い前回「手作り台上模型エンジン」を製作しました、今回は更にリアルナな発動機を目指し本来ならば鋳物(鋳鉄)で製作する事ができれば良いのですが設備及びコストから板材と丸棒の加工にて極力古い発動機のイメ−ジ及び作動を目標としました。
観賞のみならず運転して楽しいエンジンです。
エンジン機構の中、Hit and Miss (ヒット アンド ミス)方式を採用、間欠爆発により模型エンジンでも実機発動機に近づける試みをしてみました、模型エンジンの代表としてラジコン用エンジン等がありますが次元が違う模型エンジンができたと思っています。 
発動機及びHit and Miss については別途解説
Hit and Miss (ヒット アンド ミス)方式を採用した結果、低燃費でエコなエンジンです。
デコンプレバ−をセット、特にエンジン停止時に使用するとリアルナなエンジン停止を再現。

2、製作の変遷
 
製作の開始は平成21年5月よりスタ−トをしましたが、設計上色々な制約がありまとまらずエンジン全体の図面が完成したのは年末頃となってしまい予定より大幅に遅れてしまいました
通常はエンジン全体の図面が完成した中で各パ−ツを作っていくのですが今回は先に各パ−ツを作り最終的に合体した図面作りとなりました。
加工も大幅に遅れ2台のプロトタイプエンジンが完成(試運転待ち)したのは平成22年5月末で以降プロトタイプエンジンの試運転を行い、そのつど不具合箇所を直し試運転を継続しました。
6月の試運転では問題ない箇所が7月の猛暑で悲鳴をあげだしました、特にキャブレ−タ−及びクランクシャフトの潤滑(当初メタル方式)等外気温度上昇に起因、この暑さは災い転じて福となす方向へいく事ができました。
当初から1/4インチサイズの汎用イグニッションプラグを使う設計をしましたが、汎用プラグではネジ部の長さが足りず結果的に専用イグニッションプラグを自作しました、エンジンの耐久テストの中にはプラグも含み現状40時間ほどになりますが問題はなく、本エンジンに対しては十分な耐久性が有る事を確認できました。
以降、下記の発動機運転会に参加させていただき愛好会の方々、来場の皆さんから貴重な意見及び耐久性等(連続運転を含む)を確認する事ができました。


   平成22年10月2日  静岡県石油発動機愛好会主催
掛川市サンサンファーム発動機運転会
   平成22年11月7日 茨城県發動機遺産保存研究会主催
常総市ふるさとまつり 発動機運転会
   平成23年 6月5日  静岡県石油発動機愛好会主催
アクティ森運転会
 
   
     <発動機運転会参加 スナップ写真>

平成23年6月末に2年程かかりましたがエンジン運転台を含め最終版が完成しました、一部目標を達成できない項目として石油発動機を目指し試作及び実験を試みましたが、冬場の外気温が低い時のガソリン運転から石油(灯油)への切り替え調整が難しく最終的に主燃料はガソリンとしました、石油(灯油)燃料による運転は今後の課題となりました。

3、エンジン仕様 
エンジン種類  Hit and Miss Engine
水冷単気筒4サクルOHV型イグニッションガソリンエンジン
排気量  14cc(模型グロ−エンジン換算 約90エンジンサイズ)
ボアー  23.0mm
ストローク  34.0mm
圧縮比  7.1
バルブ制御  ワンロッド(排気バルブ)方式、吸気バルブは自然吸入方式
フライホイ−ル直径  100mm
点火方式  無接点CDIバッテリ−点火
点火信号  ホ−ルIC(磁気センサ−)による
点火プラグ 1/4インチサイズイグニッションプラグ (自家製)
点火用電源 アルカリ乾電池4本(6.0V)又はニッカド、水素電池4本
(4.8V.8V) 運転時間はアルカリ乾電池で約1時間
潤滑方式 シリンダ−、ピストン関係はオイル滴下式、コンロッドビックエンドはグリ−ス滴下式、バルブ関係は始動ごとのオイル手差し
燃料 自動車用レギュラ−ガソリン又はホワイトガソリンを使用
燃料タンク容量 40cc (注入量最大 32cc タンク容量の80%)
燃料消費量 40分以上の運転可能 (Hit and Miss 運転時)
エンジン基本回転数 700rpm 〜 2,000rpm
エンジン定回転数機構
 (Hit and Miss)
排気バルブの動作を遠心ガバナ−により制御しエンジン回転数
を一定にする、調整値は約1100rpm
デコンプ付き 特にエンジンの停止時使用
始動方法 手動(フライホイ−ル回転による
エンジン単体寸法 195mm(縦)×130mm(横)×125mm(高さ) 
エンジン単体重量  2.9kg 
全体寸法 300mm(縦)×200mm(横)×215mm(高さ)
総重量  5.5kg 


4、エンジン全景写真



5、発動機の解説(概要

今の若い方に発動機とか原動機と言ってもそれはなんですかと逆に質問される事が多いのですが、意味を辞書で調べますと動力を発生する機関の事で通常はエンジンという表現の方が解りやすいのかもしれません。
年配のほとんどの方は発動機と言えば幼少の頃を思い出しノスタルジーを感じるのではと思います。

国産発動機の歴史は古く、明治時代後期に輸入品の模製から始まり明治、大正、昭和と発達の途を歩んできたようです、その中で農業、林業、漁業などで発動機は幅広く利用され日本経済の飛躍的な発展の原動力となりました。

特に石油発動機全盛の頃には低回転での使用が前提のため構成部品に高い工作精度を要求されず全般に製作が容易で地方の零細企業などで広く製造され日本国内でも地方の小発動機メーカだけでも100社以上あったようです。

小型、軽量で高性能なガソリンエンジン及び
ディーゼルエンジンが開発されユニット化された農機具等が出現し発動機単体を必要としなくなり徐々に姿を消しています。

姿を消していく状況の中、眠っていた発動機を再生し保存する発動機保存会又は愛好会が全国に広まっています、時々地方では発動機運転会が開催されています。
是非機会がありましたら発動機運転会をのぞいて見て下さい、
エンジン好きな方なら低回転で力強いエンジン音、匂い、始動時の白煙及びエンジンを所有している方の熱心さにきっと感動をおぼえると思います。


6、Hit and Miss Engineの解説(概要)

Hit and Miss Engineの発祥は欧米になると思いますが、色々調べてもエンジンの写真及び動画はインタ−ネットで多くありますが、機構及び作動について詳しく解説された資料及びネット上での解説は少ないと思います、当ホ−ムペ−ジをご覧になっている方でもHit and Miss Engine(ヒット アンド ミス エンジン)を知っている方は少ないと思います又国内の発動機愛好者による運転会の中でHit and Miss Engineを見ることはまれだと思います国内では知名度が低いエンジンでしようか。

Hit and Miss型発動機の説明の前に知っておきたい事があります、一般的にはHit and Miss型発動機は通常の発動機と同じ4サイクルエンジンです。  
(注)2サイクルのHit and Miss Engineも有ります
発動機の役割はエンジンの回転力を他の作業機に伝え仕事をさせることですが作業機は状況により負荷が大きく変動しエンジン回転も合わせて変化します、負荷が大きくなればエンジン回転数は下がり場合によってはエンジンスト−ルが起きます、負荷が軽くなればエンジン回転数が上がろうとします作業機側は一定の回転で運転できることが必要です。
ほとんどの発動機には自動的に回転数を補正できるよう遠心力を利用したガバナー(遠心調速機)が取り付けられています。

遠心調速機は回転する軸の回りのウェ−トが遠心力により外に振れる作用を利用します、回転が速くなるとウェ−トとが外に振れ、回転が下がるとウェ−トが内側に戻ります。

遠心調速機ウェ−ト 遠心調速機レバ−関係

エンジン回転上昇 ウェ−トがある一定以上外側に移動した場合ウェ−トの動きと連動したア−ム先端が排気バルブを開きの状態でロックします、合わせて点火回路を遮断します。

排気バルブが開きの状態ではシリンダ−内は大気圧になり圧縮及び吸入作用はなし当然爆発工程はありません、エンジンはフライホィ−ルの慣性力で回転し徐々に回転は低下します。

エンジン回転下降 ウェ−トがある一定以上内側に移動した場合ウェ−トの動きと連動したア−ム先端は排気バルブの開き状態でのロックを解除します、合わせて点火回路も遮断状態から復帰します。

ロックを解除した瞬間に吸入、圧縮、爆発工程が発生しエンジン回転は上昇します。

注1)一般的には排気バルブの制御はカムギヤ−以降の排気側プッシュロッドが制御されます
注2)当エンジンは点火の遮断制御機構は除いています

エンジン回転上昇排気バルブ開きでロック状態 エンジン回転下降排気バルブ開ロック解除状態

常の発動機はクランクシャフト2回転につき1回爆発というサイクルで回転しており排気音は規則正しいリズムになりますがHit and Miss型発動機は爆発し回転が上昇した後は設定された回転数以下にならないと次の爆発がおこりません、爆発から爆発までは少し間があきその間はフライホィ−ルの慣性力で回ります又エンジン負荷により爆発から爆発までの間隔は変化します。 独得なエンジン音です

Hit and Miss Engineの良いところは間欠爆発により非常に燃費が良い事ですが、上記の作動をする為には質量の大きなクランクシャフト及びフライホィ−ルを必要としますのでエンジン重量が重くなる事と回転制御が荒い欠点が有ります。
 
Hit and Miss Engineの全盛期は1920年頃(大正9年頃)までになります、以降はガバナー(遠心調速機)はキャブレ−タ−のスロットルバルブを制御する方式に徐々に変わっていきます。
国内での発動機愛好者による運転会のエンジンはほとんどはHit and Miss Engine以降でスロットルバルブを制御する方式だと思われます。

7、エンジン運転中の動画 
発動機動画内容の説明

試運転1 Hit and Missの運転です、後半にガバナ−解除の低回転運転有り
試運転2 Hit and Missの運転でガバナー(遠心調速機)関係の作動拡大映像
試運転3 Hit and Miss解除による高速及び低速運転(スロットルバルブによる)
エンジン運転中の動画は  こちら