Vacuum engine
                                                

6、エンジン製作及び各部の構造説明 このペ−ジは写真をクリックで大きな写真が見られます

完成目標
特別な取り扱い技術がなくても、室内で運転を楽しめるエンジンであること。
エンジン回転数が可変できる構造と、通常のVacuum engineの最高回転数は4 00 〜700rpm程ですがその回転数を上回る高速型?のエンジンであること。
回転するだけではなく発生した動力を活用、発電機を駆動しLEDを点灯させる構造を持つこと。
上記の完成目標を念頭におき、試作を繰り返し最終的に完成したエンジンです。

エンジンベ−ス
アルミA5057の板材より加工。
クランクシャフトサポ−ト左右のポストには内径5mm×外形11mm厚み4mmのボ−ルベアリングを配置。
通常ベアリングについては圧入で固定しますが、左右のポストが独立している事によりベアリングのアライメントが狂い状況によりベアリングのフリクションが増大する事が考えられますので、ポストのベアリング挿入穴はゆるめの加工として、エンジンベ−ス組立て後クランクシャフトをジグとして、圧入せずフリ−な状態でエポキシ接着剤による固定としました。
ベアリング内には潤滑グリ−スが封入されていますが粘度の低いオイル潤滑方式に変更すれば更に性能向上が望めると思いますが、一般的ではないため今回は採用しませんでした。


クランクシャフト及びフライホイ−ル
クランクシャフトは5ФのSK材、クランクホイ−ルは錆びのでにくいステンレス303で分割圧入方式、クランクピンはボルト方式となります。
フライホイ−ル及びテ−パ−コレットはアルミA2017材。
クランクシャフトへの固定方法は正逆転時の緩み防止及び振れを極力抑える為、テ−パ−コレット方式を採用。
フライホイ−ルの直径は65mm、重量は108g中心部の金色部分は塗装による着色です。

シリンダ−関連

シリンダ−関連部品 ピストンの試作品

シリンダ−及びピストンの組み合わせはラップタイプ方式とし、シリンダ−はシリンダ−ブロックに真鍮製のスリ−ブを圧入、ピストンはアルミ(A2017)で、極力熱膨張によるフリクションを抑える組み合わせとしています。
シリンダ−ブロックには冷却を高める為、冷却フィンの枚数は通常のエンジンよりも多い加工をして有ります。
コンロッドはアルミ(A2017)材で、ビックエンド及びスモ−ルエンドは真鍮製のメタル方式です、ピストンピンはSK材でピンの片側にはロ−レット加工をしピストンに圧入する固定方式としました。
シリンダ−ヘッドは真鍮製で火炎を取り込む為のポ−トは7.5Фです。

追記
バキュ−ムエンジンのシリンダ−、ピストンの条件
  
@熱膨張による影響が少ないこと
  A気密性が高いこと
  Bフリクション(抵抗)が少ないこと


熱膨張については材質を選択する事である程度解決できますが、気密性とフリクションは相反する関係にあるように思えます、シリンダ−とピストンのクリアランス(隙間)を少なくすることと粘度の高いオイルで油膜を作る事により気密性を高める事ができますがフリクションが多くなります、油膜がなければ焼きつきが発生しますバキュ−ムエンジンはシリンダ−とピストンの潤滑がネックになります。
上記の事から当初、無給油に近い方式を模索し試作実験しましたが思うような結果がでませんでした。
  
@オ−ルセラミック -- 最高の物ができると思いますが個人では製作できない
   Aシリンダ−、ピストンを鋳鉄(FDC)により製作し材料の中に油分を保持
   Bピストン材質の変更----メタル材、樹脂
   Cピストン表面の特殊加工----フッ素、シリコン、テフロン加工(スプレ−材による)


最終的には今のシリンダ−とピストンの組み合わせの中、総合的に考え現状ミシン油(ISO粘度グレ−ド7相当)による潤滑がベストと判断し給油方式としました。
給油方法は原始的ですがクランクピン部のネジを外し、コンロッドとピストンをシリンダ−より抜き取りピストンにミシン油を塗布します。(一回の塗布で約30分程の連続運転は可能)
右上の写真は試作中のピストンの一部です、左側はテフロンピストン、テフロンリング方式です素材としては良いのですが熱膨張の関係で没となりました。
シリンダ−、ピストンについては改善の余地があります、現在構想としてシリンダ−は真鍮製で内部はハ−ドクロ−ムメッキ、ピストンはカ−ボン仕様を検討中です。


開閉バルブ関係

バルブ関連部品 カムの試作品

カムは平面溝カム式、火炎開閉バルブは往復回転シャツタ−式になります。
バルブの動きはクランクシャフトに固定されている平面溝カムの回転をロッカ−ア−ムにて上下運動に変えバルブを開閉します。
カムはポリエチレン製で溝加工後アルミケ−スに挿入、クランクシャフトへの取り付けはバルブタイミングを調整できるよう
六角穴付セットネジにより固定、ロッカ−ア−ムはアルミ(A2017)板材より加工、開閉バルブは1mm厚の真鍮製でシリンダ−ヘッドとの密着は支点部のコイルスプリングの反力によります。  
         
バルブタイミング(平均値)
         開き開始角度   上死点前   90度
         閉じ角度     下死点前   60度

         開き時間(角度)   210度
         閉じ時間(角度)   150度

追記
試作当初のカム形状は板カム方式で、試運転を重ねカムの形状を含めタイミングを模索し上記のタイミングが当エンジンには最適と判断、板カムをモデルとして同じタイミングの平面溝カムを作製しました。
平面溝カムに変更した理由は、板カム方式では構造上ロッカ−ア−ムにリタ−ンスプリングが必要になります、少しでも
フリクションを低減する為です。
海外のバキュ−ムエンジンは50〜700rpm程の回転数でバルブ開閉タイミングは一般的には開き時間(角度)140〜180度
のカム形状と、閉じ角度は下死点前20〜40度程のタイミングが多いと思います。
当エンジンは低速で回転するだけではなく、振り子運動及び通常エンジンよりも高い回転をだす事とエンジン音を含め運転を色々楽しむねらいがあり一般的なタイミングとは異なっております。
バルブ開閉タイミングはそのエンジンの性質及びエンジン音を含め大きく変えます、自作される方は色々なタイミングで実験してみて下さい。


アルコ−ルランブ


アルコ−ルランプ関連部品 火炎の状態

アルコ−ルランプのタンクは真鍮製でタンク容量は30ccです、燃料注入時は最大70%の21cc程になります。 (燃焼時間は20分から35分)
アルコ−ルランプの芯材は本来は木綿になりますが手芸店で簡単に手に入るファッシヨンロ−プの大を使用しています材質はレ−ヨンです。
エンジン回転数を可変することを当初の計画としておりましたので、つまみの回転でアルコルランプを前後移動できる機構としましたスライド量は約10mm程です。
燃料は薬局で簡単に手に入る燃料用アルコ−ル(一般的な成分エタノ−ル22.2%、メタノ−ル76.3%、水分1.5%)又はエタノールを使用します、成分がメタノ−ルのみのアルコ−ルは毒性がありますので使用しません。

アルコ−ルランプの芯の位置


右上の写真は燃焼時の火炎の状態を撮影したものですが、火炎の色は赤、橙、黄、青と火炎の位置により違います、色と燃焼温度の関係は青、黄、橙、赤となります。
バキュ−ムエンジンの効率は燃焼温度の高い青色の火炎を吸い込む事により高まります、シリンダ−ヘッドの吸い込み位置と芯の位置は重要です、芯の先端位置はシリンダ−ヘッドの吸い込み位置センタ−より上部2mm程の位置を基準値とし上部6mm程を調整範囲としています。
芯の高さを上げれば当然火力も強くなり、エンジン特性(エンジンの吸排気音も含む)も変化しますが比例して燃料消費も増えますので限度があります。

追記

ロウソクの火炎温度を詳細解説したデ−タ−は有るのですが、アルコ−ルランプの火炎温度について解説されたものが無い為、自分で温度測定しましたが予測に反し火炎の青色と赤色温度が逆転した結果となりました。
色々調べてみた結果、赤色の炎は輻射熱が高い事と火炎温度を測定する為の温度センサ−が必要な事がわかり温度測定はあきらめました。
文献によれば、ロウソクの最大燃焼温度1400度、アルコ−ルの最大燃焼温度1700度という記述もあります、青色の一部または付近に1700度に近い高温の領域があるのではと考えておりますが今後正しいデ−タ−が解りましたら訂正していきます。


発電機関連  エア−ギャップ(ブラシレス)発電機


発電運転ビデオあります 発電運転ビデオは こちら

発電機関連部品 無負荷発生電圧グラフ

左上の写真はLEDを点灯させる為の発電機関連構成部品です。
回転抵抗の少ないエア−ギャップ(ブラシレス)発電機で単相交流を発生します、エンジン特性及び点灯させる2個のLED特性に合わせた専用発電機となります。
左上の写真の中、発電コイルはアルミケ−スに納めエンジンベ−スのフライホイ−ル側クランクシャフトポストに固定、磁石はフライホイ−ル内側に固定しクランクシャフトの回転と同期します。

発電コイル 内径5mm、直径14mm、厚み4mm、線径0.15mm、抵抗11Ω 4個のコイルは直列接続し合計抵抗は44Ωです。
マグネット ネオジュウムタイプ 直径5mm、厚み3mm 合計8個を円周上に極性を交互に変えベ−スの鉄板に接着。
LED 黄色、標準電圧2.2V、電流20mmA、 3200〜9300mcd エンジン台前面左右の真鍮製ホルダ−内に2個をセット。 (各々極性を変えて接続)

右上のグラフはデジタルテスタ−で測定した無負荷発生電圧(交流)の実効値グラフです、交流波形の最も高い部分の電圧は実効値の√2倍で約1.41倍程(最大値)になります。 
LEDは直流を使うことが前提で逆電圧に弱い素子ですが、LEDの耐逆電圧は5V程有りますので問題は有りません。
整流用ダイオ−ド及び平滑コンデンサ−を使っておりませんので、回転が遅い時には若干チラチラと点滅しますが回転が早くなれば点滅のサイクルは短くなります。

試作当初の実験発電機 ケ−ス一体型発電機

左上の写真は試作当初の実験発電機で本エンジンの特性に合うよう各種の実験をしました。(コイルの大きさと数及びマグネットの大きさと数等)
右上の写真も試作品でケ−ス一体型発電気です、ベルトドライブ方式で本エンジンに搭載する予定で製作しました。
    仕様    エア−ギャップ(ブラシレス)発電機
           発生電圧は上記発電機と同一
           直径39mm
           厚み17mm 
           シャフト径3mm 
           前後にはボ−ルベアリングを配置

エンジン台

エンジン台 エンジン本体のかさ上げ

金属(非鉄金属)だけでは冷たい感じになりますので、温かみが感じられるよう台の外枠は木材のアガチス材を使い木の木目がでるよう透明ウレタン塗装をしています。
台の上面は2mm厚のアルミ板を接着固定しております。

エンジン台とエンジン本体の取り付けはエンジンの暖気を促進するため、スペ−サ−(4mm厚)によりエンジン本体をかさ上げして取り付けています。


その他


エンジン冷期時の結露と暖気の必要性について

バキュ−ムエンジンの性格上、天候により
 湿度が高い時  冬季の温度が低い時
運転直後シリンダ−ヘッド及び開閉バルブに結露が発生し結露がシリンダ−内に吸い込まれ正常な運転ができない事が有ります。
 回転しない  回転が不安定
 回転が上がらない

但し暖気が進めば結露は解消され正常運転に戻ります。  (左の写真参照)

結露を発生させない対策は現状むずかしいと思います。
二つ目の問題として結露が発生しなくても、エンジン各部の温度分布が一定になるまではエンジンの性能が発揮されません。
対応方法としてエンジン運転前にアルコ−ルランプの火炎を極力エンジンに近づけ充分な暖気を行うことです。
暖気時間は天候により変わり一概には言えませんが目処として夏場は2分以上、冬場は5分以上が必要です。

最後に
以上でバキュ−ムエンジンの説明は終わりとなります、最後まで当記事を見ていただき有難うございます、不明な点またご質問が有りましたら遠慮なくご連絡下さい。